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藤沢周平
「三屋清左衛門残日録」について

  
 文春文庫 (ふ-1-27)
 四三七頁(サイズ約16×11×1.6)
 三屋清左衛門残日録の本
 1992年第一刷(ずり)。2007年第三七刷
 本体590円+税
 ◇藤沢周平 1927〜1997 現鶴岡市高坂生まれ  
  1985(昭和60)「三屋清左衛門残日録」執筆  

【目次】 【主要人物】  
醜女 三屋清左衛門 多美
高札場   又四郎 藤川金吾
零落   里江 杉村要助
白い顔 佐伯熊太   奈津
梅雨ぐもり 大恤ス八 安富忠兵衛
川の音 中根弥三郎 黒田欣之助
平八の汗 平松与五郎 おみよ
梅咲くころ おみさ 安西佐太夫
ならず者 松江
草いきれ 石見守 野田平九郎
霧の夜 朝田弓之助 相庭与七郎
闢弥兵衛 半田守右衛門
立会い人 清次
闇の談合 おうめ 金井祐之進
早春の光 山根備中 小沼惣兵衛
安富源太夫 成瀬喜兵衛
友世(もよ) 小木慶三郎
金井奥之助 納谷甚之丞
波津 船越喜四郎
 
   
 
 主人公の三屋清左衛門は、前藩主の用人(ようにん)を勤め上げたので所謂勝ち組であろう。反面、目次「零落」(れいらく…落ちぶれること P71)に登場する金井奥之助は負け組である。奥之助と清左衛門のその後の身分の立場が、政変に際し遠藤・朝田派のどちらに与(くみ)したかで二人の分かれ道になったのである。嫁の里江の一言は、清左衛門に的確な助言を与える。清左衛門にして「これはしたり」と云わせるほどである。
 P96に、同じ隠居でも一度も日の目を見ず、落ちぶれたまませざるを得ないことがあること、また年老いてみじめなのは、豈(あに)奥之助のみばかりではないのであろうことを痛感する。清左衛門には、3年前に亡くなった妻喜和の思いを嫁里江が気遣って、なにかと心配りをしてくれていることに、内心喜んでいる節がある。
 いまだに藩のことが気にかかる清左衛門は、まだ現役で町奉行に励む佐伯熊太に、なにかと藩の様子を聞いたり、熊太は清左衛門に仕事のことで相談しと小料理屋「涌井」で一杯やるのが楽しみのようである。
 ラストでは、中風で倒れた旧友大塚平八郎の歩行練習の姿に、…力を尽して行きぬかねばならないことを知らされる。


 三屋清左衛門と佐伯熊太が、小料理屋「涌井」で酒の肴に楽しんだ庄内の料理の数々である。

 はたはたのうまい食べ方は、田楽にして焼いたものと、茹でて大根おろしを添えた醤油味で食べるのも珍重されているという。
清左衛門のような時として頼りにされた、充実した隠居ならば本望であろう。

       日残リテ
          昏ルルニ
             未ダ遠シ

 
 
         
くちぼその焼き物 山菜のこごみの味噌和え      はたはた      筍の味噌汁   赤蕪の漬物